創業百三十余年の老舗
伊豆急下田駅から車で五分、稲生沢川に沿って豊かに湧出する蓮台寺温泉は、約千三百年前に行基上人が発見したという古来からの名湯です。その中心部に、五代目の先代石橋謙太郎が職人たちの先頭に立って完成させたのが、創業百三十余年になります老舗クアハウス石橋旅館でございます。
多才な謙太郎は大正時代から海運、呉服、銀行と父英太郎の遺した事業を発展させ、稲生沢村村長をやり、蓮台寺温泉組合もつくりましたが、恐慌時代の銀行取付け騒ぎに事業を整理して蓄財を搬出、本家の奥座敷だった石橋別荘で本格的に旅館業を始めたといいます。
今に伝わる名工の技
豪気闊達な人柄で、寺社仏閣に造詣の深かった謙太郎は、豪壮な唐破風御殿造りの玄関、屋根の特注瓦に石橋の名を刻み、左右に滝昇りの瓦鯉、屋根の下の飾りには鶴と亀との一刀彫り、八間幅の格調高い玄関式台は見事な松の一枚板、柱はすべて丸い芯木、格天井の枡目に伊豆長八の流れを汲む名工が腕を振るった漆喰い造りの花々などを造りました。
※格天井と漆喰いの花々の修復には、宮内庁御用達18代目藤戸亨により、完成しました。
また、車社会の到来を予測し、道路に面した田を埋め、山林を百数十メートル掘削して回廊トンネルをつくり、奥にあった別荘を石橋旅館としたのも優れた先見性をもっていた謙太郎の多才な発想によるものです。 |
千三百年前からの名湯「蓮台寺温泉」
下田市の北、稲生沢川と蓮台寺川の清流に沿った閑静な山あいの温泉街。地名の蓮台寺とは、七五〇年代、行基上人によって創建された寺で、真言密教の修験道場や宿坊として、一二二〇年頃までこの地にあったと伝えられています。しかし、場所は特定できず現在は地名のみに名残りをとどめています。 |
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▲ 当時の石橋旅館 |
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1. 屋根の特注瓦
2. 八十八面格天井
3. 鶴と亀との一刀彫り
4. 当時の石橋旅館広間
5. 当時の蓮台寺温泉 |
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